いぬほちシーズンイラスト隠し倉庫
ここは今後TOPなどで使用予定、もしくは使用済みのイラストの倉庫です。 どんなシチュエーションかなどの簡単なストーリーを付けて保管してあります。
ストーリーは思いつくまま書いていますので、期待しないでくださいね。
TOPへ戻る
10
BACK NEXT
2004年12月07日作成
 「サンタさんって本当に居るの?」
何気ない一言。
子供の頃からサンタさんにプレゼントをもらった事が無いと言うご主人が、クリスマスの飾りつけをしながらそうつぶやいたのだった。
だが、いぬほちは知っていた。サンタが居る事を。
子供から大人になると、サンタさんは来なくなってしまう。
でもそれは現実と言う景色に慣れてしまう為に、サンタがその人を見つけられなくなってしまっているだけなんだって。
サンタさんはみんなにいっぱいいっぱいプレゼントを配りたいんだけど、去年まで見つける事が出来た子供が突然見つけられなくなり、実はサンタさんの方が寂しい思いをしているんだよ。
いぬほちはご主人にその事を告げようとするが言葉を飲み込む。

 日が暮れて辺りは暗闇につつまれた頃、いぬほちはこっそりと家を抜け出した。
「僕がサンタさんを連れてくれば、きっとご主人はサンタさんを信じてくれる。」
大好物のご飯が売っている文房具屋さんにも目をくれず、いぬほちは一心不乱にサンタの家へ向かいました。
マンションや家がどんどん減っていき、回りはうっそうと木が生い茂る深い森の中に。
森は深く、進むに連れて雪が降り積もってきました。
暗さ、寒さ、孤独。怖い・・・寂しい・・・もう帰りたい・・・・
真っ暗な森の中でふと足を止める。
森の木々は今にもいぬほちを押しつぶしそうに見え、雪はいぬほちの勇気を容赦なく吸い取っていく。
もう泣きそうになって俯いたいぬほちは真新しい足跡を見つけた。
木々の間を真っ直ぐに伸びていく足跡。
いぬほちはいつの間にか足跡が伸びていく方へ走り出していた。
すると、突然森が切れて広場に出る。その広場には木で出来た家がポツンと建っていた。
その家の窓からはやさしく暖かい光が漏れ、家の横には何百と言うプレゼントとてっぺんには銀に輝く星が付いた大きなもみの木がそそり立っている。
いつの間にかさっきまでいぬほちの目に溜まっていた涙は消えていました。

 「ほぅ。こんな時間にお客さんかな?」
突然玄関が開き、恰幅の良いおじいさんがいぬほちに声を掛けてきました。
そのおじいさんに駆け寄るいぬほち。
「寒いから早く入りなさい。」
おじいさんはやさしく微笑み、いぬほちが部屋に入るとやさしくドアを閉めた。
「こんな遠くまでわざわざどうしたんだい?」 部屋中にやさしく響く声。
「サンタさん!、僕のご主人にプレゼントを持ってきてあげてくださいっ!」
おじいさんに振り返りいぬほちはサンタのおじいさんに向かい言った。
「ん?わしはみんなにプレゼントを配っておるが届いておらんのかのう」
「ご主人は大人なんです・・・
「なるほど・・・ それじゃあプレゼントは届かんはずじゃ。」
「ご主人はサンタさんに会った事なくって・・・ サンタさんが居ないって思ってるみたいで・・・ でもサンタさんは居るし・・・ でも、でも・・」
いぬほちは言葉を詰まらせながらサンタさんに訴える。
「そうかそうか。だが残念な事に、まだトナカイ達は出かけたまんまなんじゃよ。それにクリスマス当日はこれ以上配れんのじゃよ。」
そう言いながらサンタさんは俯いたいぬほちの頭を撫でる。
「じゃがクリスマスまでなら時間も有るし、そりを引くのがおればなんとかならん事も無いぞ。」
おじいさんを見上げたいぬほちはその言葉の意味を察し目を輝かせる。
「僕がそりを引っ張る!!」

真っ赤なコートを着たサンタさん。その横にはとなかいの角を付けたいぬほち。
外に出て小屋からそりを引っ張り出す。
いぬほちに手綱を取り付け準備完了。
「じゃぁ、少しクリスマスには少し早いがいくかのぅ。がんばってそりを引いておくれ。」
全身の力を込めてそりを引き出す。
そりは滑るように進みだし、いつの間にか空に浮かび上がっていた。
「空を飛んでる〜〜」
いぬほちは興奮して叫ぶ。さらに力が入り、どんどんどんどんそりは加速していく。
「早くご主人にプレゼントを届けなきゃ。」
「ほほほ。頑張っておるのう。じゃが、まだまだトナカイよりは遅いのう。」
サンタさんは笑いながらそう告げると、そりに付いていたボタンを押した。
機械音が続いた後突然・・・・

「しゅごぉぉぉ〜〜〜〜〜」

そりの後ろからジェットエンジンが突き出て噴射を始める。
森を抜け家の町並みが迫ってくる。
いぬほちは必死に自分の家を探していました。
「あっ、あそこだ〜〜」
と言った瞬間にはすでに遥か後方に消え去ってしまう。
「もっと早く言わんとのう。急には止まれんのじゃから。」
2、3度自宅の上を通り過ぎたが、なんとか家の前に音も無く降り立った。

 サンタさんはごそごそとそりの荷台をあさり、いぬほちの頭の上に綺麗にラッピングされたプレゼントを乗せる。
「じゃあ、これをご主人の元へ持って言ってあげなさい。」
満面の笑顔で家に入ると、ご主人の部屋に真っ直ぐ駆け出した。
「サンタさん連れてきたよ〜〜〜〜」
そう叫んで部屋に入るがご主人は椅子に座ったまま机に突っ伏してすでに寝てしまっていました。
「サンタ・・・さん・・・ 来たけ・・・」
いぬほちは起こそうとしましたが止めて机の上にプレゼントを置き、近くに有った毛布を引っ張りご主人の体にかけました。
その光景を窓の外からサンタさんは、いぬほちに微笑みかける。
「サンタさんありがとう。」
窓の外のサンタさんに気づいたいぬほちは呟いた。
ご主人の横に来ると寝息につられていつの間にかいぬほちは寝てしまいました。

 体を揺すられる感触
目を覚ますと目の前にはご主人の顔が。
「ねねね このプレゼントなに??」
「サンタさんが持って来てくれたんだよ。」
ご主人の顔はみるみると笑顔に変わり、目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「じゃあ、サンタさんにお礼言わなきゃね。」
そう言っていぬほちをやさしく抱きかかえた。
「で、その角はなに?」
すっかり角を外す事を忘れていたいぬほち。
「昨日ねサンタさんのそり引いたから。」
「頑張ったんだね。いぬほちもありがとう。」
朝の光が部屋に差し込む。冬なのに暖かかった。

 「何か騒がしいね。外で何かあったのかな?」
ご主人がそう言うと窓の外を眺める。
丁度家の前で人だかりが出来ていました。
いぬほちとご主人が外に出て行き、人ごみを掻き分けていくとそこには・・・

「いぬほちさんや。もう一度そりを家まで引っ張ってくれんかのう」
サンタさんが家に帰れずそりと一緒に立ち往生していたのでした。
ご主人と目を合わせて苦笑いするいぬほち。
「送ってくるね。」
「いってらっしゃい。晩御飯までには帰ってくるのよ。」
そう言うとそりの前に立ち引っ張る準備を始める。
「サンタさんごめんね。」
「今年のクリスマスにはお手伝いしてもらわにゃ〜ならんのぅ・・・」
「うぅ・・・頑張ります。」
準備も終わり静かに舞い上がるそり。
そして遠くに消えて行きました。
「サンタさんありがとう・・・ メリークリスマス」
ご主人は空を見上げて言いました。


「さってと〜〜 今日はいぬほちの好きな物作ってあげなきゃ。」


いつもと同じ一日の始まり。
でも、同じの様で違う一日。
今日もあなたにとって特別な一日になりますように。


Merry Christmas



クリスマスの夜、空を見上げるとトナカイに混じっていぬほちがそりを引っ張ってるかもしれませんよ。


BACK NEXT